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2006.11.18

「同胞(はらから)」を見てみた 続き

地方の青年団と言うと、地元に住む若者の社交の為の組織といった感じで、特にたいしたことをやる訳ではない。たまにお祭りや盆踊りを企画するくらいのものだ(といっては失礼かもしれない)。兄も村の青年団に入っていたのでよくわかる。そんな青年団が、昭和50年、1975年当時のお金で、65万円の公演費に責任を持つという事は、現実的には結構大変な事だと思う。あたふたした彼らの実像が実に上手く表現されている。そんなリアルな現実を描くのが、山田洋次監督の上手いところだと思う。しかも、「ふるさと」というミュージカルを公演する「統一劇場」のオルグに扮する倍賞千恵子との交流が素晴らしい。当時、全国をキャラバンして公演するというスタイルの劇団がいくつかあったのを覚えている。自分が中学のとき、「新制作座」の芝居を感動して観た事を覚えている。地方に住んでいる子供や主婦や老人といった人たちに、自分達の作った芝居やミュージカルをこちらから、出かけて行って観てもらおうというものである。おかげで、当時田舎の少年にとっても恩恵を被ったのである。そんな運動の先陣を切ってオルグ達は、全国の隅々まで打って出たのである。彼らの熱意が青年団にも伝わり、しかもそれを観た村の子供や主婦や老人にまでそのその熱意は伝播したように思う。特に「ふるさと」というミュージカルは、西洋のミュージカルのスタイルはとりつつも、全く別もの、どろどろとした当時のあるいは日本独自のスタイルに練られていた。当時の農村の問題、開発と後継者、嫁問題等など、廻る村々同様の問題を抱えてる農村をテーマにして作られている。共感を呼ばないはずはない。ちなみに、「統一劇場」の他の作品の地方公演の回数を調べたら、」1975年当時、一つの芝居が全国でなんと四百数十回講演されていた。なんというエネルギーだろうか。その数年後に回数はグンと減って、劇団は3つに分裂して、今も尚続いているという。山田洋次監督のその後の有名なあの「幸せの黄色いハンカチ」の映画の中にも、夕張に近い村でアコーディオンを弾きながら歌声運動をしている風景を映していたが、なんとなくこの名残みたいな風景だなと思ったものだ。この「ふるさと」のテーマソングを作曲された岡田京子さんは『うたの旅』という本も出版され、日本全国をアコーディオンを肩に歌って出会った人のことを書かれている。芝居に限らず、70年代のフォークソングにもあい通じるものがあるではないか。あの熱気、熱意、はどこへいったのだろうか。山田洋次監督は「同胞」のなかで、そんな当時の若者達の熱を、素朴に実にリアルに描いたと思う。最後にラストの方で青年団団長である、寺尾は語る。いま振り返ってみると、あんな大変な事を俺たちがどうしてできたんだろう? と思うときがある。夢中になってやり遂げようとした、あのときの事を懐かしく思うと。そしてこれからの自分の人生に何回もあんな事があるといいと思うのであると。その後続く山田監督の映画作品この幸福論で描かれているように思う。「寅さんシリーズ」「幸せの黄色いハンカチ」「家族」「故郷」「遥かなる山の呼び声」「息子」「学校」などなど。哲学的な「幸福論」はさておいて、僕は山田洋次のこの幸福論が好きなのであって、もう何処にもないと思われてたもの、とっくに喪失されてたと思ってたものが、じつはまだ、というかとても身近に、足もとにあるんだということ、あるいはディスカバージャパンということを、常に考えている監督が山田洋次監督なのではないだろうか。(「同胞」と「遥かな山の呼び声」を観て。

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コメント

ponntaは、faceは夕張に作品に感動したかったの♪

投稿: BlogPetのponnta | 2006.11.19 12:04

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