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2005.08.21

沈するやつもいる

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いよいよ本番、湖に漕ぎだす

何事にも好奇心おう盛な息子君、それはすごくいいことなんだけど、むこうみずというか身の程知らずという部分もある。過去に苦労した事があるのだ。ブランコ、なわとび、水泳、ローラースケート、卓球。一緒にやるのだが、見ていられない。それでああしろ、こうしろと口を挟んだり、手取り足取りいろいろやるのだが、そうすればするほど体が固くなってどうしようもなくなる。そのうち教える方が匙をなげてしまうのだった。
なんとか船(カヤック)は湖に漕ぎだした。ところがやはりである。右を漕ぐと右に一回り、左に漕ぐと左に一回り、他の生徒さんが順調にスイスイ漕いで目的のブイのところへ集まっているのに息子君、まだ岸の近くでクルクルまわっている。あげくには岸に戻って来て動けなくなった。仕方ないので、岸からおやじが押してやる。岸ではギャラリーがクスクス笑っている。こちらは顔が引きつって、照れ笑いなんか浮かべるのがせいいっぱい。なんとかならないか、岸から「あんまり力一杯漕ぐんじゃない」とか「もっと力を抜け」とか声をかけてやる。そのかけ声が恥ずかしい。でもしかたない。そんなこんなでも、どうやら悪戦苦闘しながらようやく少し前に進むようになった。先生も心配で付きっきりになる。すると必然、他の生徒さんに教える事ができなくなる。とうとう先生も匙を投げたか、息子君、先生に見放されてしまった。おそらく胸の内、穏やかでないだろうなと思いながら、カミさんと二人、やきもきしながら黙って様子を見るしかない。
 「あーあ、やっぱりだめだったね」なんてカミさんと二人で眺めている。いつも息子君、みんなと一緒に行動をとれない。遅れている。それでもぐいぐいスピードに乗って進む。だけどクルッ。「うちの息子だけ」なんて思って見ていると誰か沈しているやつがいるではないか、やった、やった、受講してる生徒さんのなかで唯一大人のあのおじさんが沈している。他人の不幸を笑ってしまった。いけない。湖は浅いらしい。胸の辺りまでしか深くない模様だ。
 そうこうしてるうちに、向こう岸ちかくまで行って、小さくしか見えなくなった。何をやってるのだろうと、目を凝らしてると、まだくるくる回転してるではないか、そしてそのうち向こう岸の葦のなかに隠れて見えなくなってしまった。「おそらく一人でどうしようもなくなって、パニックに陥っているか、泣きべそをかいてふてくされているかどちらからだろう」とカミさんと二人で話していた。「これから先、社会に出て行ったら息子君、どうなるんだろう」「きっとやっていけないな」なんて二人で暗く落ち込んでそんなことを話していたのだった。
 そうやって、時間になりようやく一行が帰ってきた。息子君も時々回転しながらもやっとついてくるではないか。そしてよくみると、船(カヤック)の舳先に何か乗っている。ニジマスの死骸がである。「なに乗せてんだ〜」と岸から声をかけると先生が、「向こう岸でニジマスがいっぱい死んでいるんですよ、どうやらそれをみんなに見せたかったらしいですよ」。岸から見ていて、泣きべそをかいてどうしようもなくなってるというように見えたのは、実は死んだニジマスを船の上の乗せるために悪戦苦闘してる様子だったらしいのだ。だから、泣くなんてとんでもない、実はけっこう本人楽しんでいたのだった。先生も「変わったお子さんですね」とは云わなかったけど、そんなニュアンスでクスッと最後に笑ったのだった。当の息子君は「あ〜楽しかった」とご機嫌であった。
情けないのは見ている親なのであった。何が情けないかというと、そんな風にしか見れない親でことが情けない。それに比して息子のなんといきいきしてる事か、あんまりうまいとはいえないけど、それなりに初挑戦して、楽しみながら、そして苦しみながら、しかも悪戦苦闘しながらなんとかやっているのだった。「何が日常からの脱出だ」なんて思った。日常の延長じゃないか。でもそれに気づくから旅や冒険はやはり、非日常なのだろう。

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カヤック初挑戦だ〜

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コメント

こんばんは、faceさん。
今回のキャンプの一連の記事、楽しく読ませてもらっています。
非日常を求めて旅に出る・・・頷けますねぇ。
そんな旅、私も理想です。

息子くんのカヤックの初挑戦をやきもきしながら眺めているfaceさんご夫婦の気持、わかるような気がします。
私も子供達の様子を見ながら一喜一憂していますもん!
しっかりと見守ってくれる人がいるって言う事は、きっと息子くんの何にでもチャレンジする意欲に繋がっていくのかもしれませんね。

投稿: ぽっかぽか | 2005.08.22 22:32

こんにちは、ぽっかぽかさん。
読んでいただいてどうもありがとう。
文章が下手で、書いてから
書かなければ良かったかな
なんて後悔してました。
つまらないことを、
えんえんと書いてしまいました。

ぽっかぽかさんの
那須の霧に煙る写真、いいですね。
リラックスできたみたいで
なによりです。

またどっか行きたいなんて
既に考えてます。
高原はもう秋の気配でしたね。

投稿: face(ぽっかぽかさんへ) | 2005.08.23 12:35

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