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2004.03.21

「しなやかな命」「KYOKO」そして「村上龍」へのオマージュ

った三つの目的のためにキョウコは、ニューヨークへ旅立つ。ホセに会って、ありがとう、と言う、そして一緒に踊る、うまくなったね、と言ってもらう。たったそれだけのために。


歳の時に両親を交通事故でなくした彼女は、叔父に引きとられ米軍基地のある街で育つ。そして八歳になった夏、ホセに出会う。ホセ・フェルナンド・コルテス。GIで、ダンサーだった。ほんの数ヶ月、彼女はホセにダンスを教えてもらった。彼女とホセは、ラジカセを持って公園や空き地に行き、踊った。ホセと一緒に踊っていると、イヤなことを全部忘れることができた。洋服を買ってもらっても、学校で先生にほめられても、遊園地に行ってジェットコースターに乗っても、友達とプールに行っても、ホセと一緒にステップを踏むときの気分にはなれなかった。「よく音楽を聞いて」ホセは、自分の耳や彼女の耳、それにラジカセから出る音を指差すようにしながら、いつもそう教えた。ホセがアメリカへ帰る日、彼女は風鈴をあげた。ホセはニューヨークの彼の住所と、ダンスシューズをプレゼントしてくれた。フランス製のダンスシューズで、表に「KYOKO」と名前が書いてあった。

セがいなくなってからも彼女はダンスを続けた。もっともっと踊りがうまくなって、いつの日かもう一度ホセと踊りたい、そう思いながらダンスを続けた。高校を卒業するとファーストフードの店でアルバイトをしながら普通免許をとり、その後、トラックのドライバーになった。そしてお金を貯めた。二十一歳になった春、やっとニューヨーク便のチケットを買った。


3章 パブロ・コルテス・アルフォンソ それは詩だ。しなやかな命だ。


勤の終わった道路工事夫やボーイ
バスの始発までの時間を
一杯二ドルのダイキリで過ごす
ラテン音楽を聞きながら

そのしなやかな命は
溢れてくる涙を
一粒も流さず
その場のすべてを飲み込んだ
唇をかみしめ
彼の名誉を守るために
まずゆっくりと肩を回す

その音量はゆっくりと上げられた
最高のバーテンダーは亡命者かやくざだ
うまいカクテルをつくる決め手は
酒と氷の隙間

地平線が荒野に飲み込まれようとする
その瞬間
シンコペーションを捉えて
反転させた身体は
四のステップを踏む
いくら獲物にとびかかろうとしても
決してその軸はぶれない
それはルンバ・コロンビア
それはアフロ・キューバン・ダンス

大切な古い友人に
その魂は救われた
ニューヨークのダンサーでさえ
一度や二度見ただけでは
絶対にまねることのできない
ボリリズムのその動き
その恩に報いるために
繰り返し繰り返し
練習したに違いない
そして
もっとも激しい動き
フラミンゴ

の匂いが漂う
獰猛な
戦士の踊り
肩を中心とした
上体だけ揺らす
ステップはシンプルだが
攻撃的でエレガントでセクシー
それはキューバ人の誇り
うねるようなベースに乗った
アルトサックスのソロ
その背後では
シンフォニーのエンディングのような
緻密で熱狂的な
ブラスのアンサンブルのドライブ

フロアーを照らす
ブルーの灯り
一度その命は
悲しそうな表情で
バーテンダーを見た
店のすべての客は
その魂から目をそらすことができない
アルトサックスの嵐のような
ソロの向こう側から
彼女の息づかいが
確実にゆっくりと大きくなっていく
彼女は倒れるまで踊るつもりだ
彼女の黒い髪が揺れるたびに
すべての客は理解した

古い友人が教えてくれた
わたしの踊りは、
ただのひまつぶしでも
ちょっとした遊びでも
気の利いた趣味でもなかった
その命の全身は
そう訴えていた

来は今
もうすでにその命の手の中にある
その命はどこかへ向かう途上にいる
キューバはゴールではない
途上にいて
しかもそれを楽しんでいるとき
その命は
未来を手にすることができる


者のあとがき
キョウコは、基地の街に育ち、ニューヨーク、アメリカ東海岸を縦断して、最後にはキューバへと渡る。移民や亡命者やエイズ患者やゲイの間を、彼女はまるでかぜのように通り過ぎてゆく。中略。
『キョウコ』は希望と再生の物語だ。
閉塞的な状況に苛立ち、自分を解放して生きようと何かを捜し続ける人々が、この作品に触れて、勇気を得てくれることを、私は願っている。


は確かに希望と再生の物語をうけとった。


*ここにかかれているほとんどの言葉はすべて村上龍氏の「KYOKO」から引用しています。ほんの少しだけ自分の言葉を詩に似たように付け加えただけです。村上龍氏に敬意を表して。

hat2.jpg

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コメント

faceさん、こんばんは。
この映画見たかったけど、見そこなっちゃったんです。
本・・・やっぱり読んでみようかな。

といいつつ読む本のリストが膨れ上がっていく私。

投稿: つきのこ | 2004.03.23 00:38

こんにちは。コメントありがとうございます。
高岡早紀の踊りも悪くなかったですね。
あまり期待してなかったのですが。上手かったです。
でも小説の方が自分にとってはもっと面白かったです。
これで、読むの2回目なんです。では、また。

投稿: face(つきのこさんへ) | 2004.03.23 12:47

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