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2004.02.22

貘さんを知っていますか?

日NHKのTVで 「貘さんを知っていますか?」 という番組を見た。 貘さんは大好きな沖縄生まれの詩人で、 これまた大好きな高田渡や佐渡山豊も出演していた。 そこで改めて自分も「鮪に鰯」を少し語りたいと思う。

僕の大好きな詩
『鮪に鰯』
山之口貘

の刺身が食いたくなったと 人間みたいなことを女房が言った 言われてみるとつい僕も人間めいて 鮪の刺身を夢見かけるのだが 死んでも良ければ勝手に食えと 僕は腹立ちまぎれに女房に言った 女房はプイと横に向いてしまったのだが 女房も亭主もお互いに鮪なのであって 地球の上はみんな鮪なのだ 鮪は原爆を憎みまた水爆には脅かされて 腹立ちまぎれに 腹立ちまぎれに 腹立ちまぎれに現代を生きているのだ ある日僕は食膳を覗いて ビキニの灰を被っていると言うと 女房は箸を逆さに 逆さに持ちかえると 焦げた鰯の 焦げた鰯のその頭をこづいて 火鉢の灰だとつぶやいた

ぜ「女房も亭主もお互いに鮪」なのだろうか? そしてなぜ「地球の上はみんな鮪」なのだろうか? 詩人は、突然地球上の生き物や人類すべてが鮪なのだと宣言する。ここまでは一言も「核」という言葉を使っていない。そこではじめて「鮪は原爆を憎み…」と出てきて、はは〜ん。となる。心憎いばかりである。詩人は、一つの詩を作るのに80回という、おびただしい推敲をしていたらしい。

20世紀は戦争の世紀、大量殺戮の世紀だと言われた。その最も脅威に感じられたものは核戦争だろう。そして人類は今世紀にもなおその問題を残している。一方には最強の武器で世界を支配してやろうという権力者のイメージがあり、もう一方には支配される側、あるいはそれらの権力闘争にいつも巻き込まれてしまう無力な市民、特に「女房と亭主」に代表される生活者・民衆のイメージがある。その対比の見事さ。そしてそんなシリアスな問題さえも漫才にしてしまう庶民の生活力、たくましさ。そんな存在への詩人の暖かい眼差しを感じる。

近では9歳になる息子が小学校で「鮪の刺身が食いたくなったと人間みたいなことを女房がいった」と歌っている。

wataru.jpg

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コメント

「人間みたいなこと」。なんていい響き。口癖にしたくなります。

投稿: lluvia | 2004.02.22 12:03

どうゆう風に使われるか興味あります。
流行語大賞狙えるかも。

投稿: face | 2004.02.23 17:27

トラックバックありがとうございます。
(いまだに「トラックバック」の意味やその効果? を理解していない私ですが……。)

この詩には曲がついているのでしょうか。
息子さんはどんな風に歌っているのかしら?

投稿: きむらいあん | 2004.08.08 16:30

こんにちは、いあんさん。
関連した記事という意味でトラックバックさせていただいてます。この詩には高田渡という人が曲をつけて歌ってます。最近では、ふちがみとふなとという京都出身のグループも歌ってますよ。

投稿: face(いあんさんへ) | 2004.08.08 17:15

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